人間の基本的な心理過程には共通する側面がある一方で、その発達や表れ方は、人々が暮らす文化的・社会的・生態学的環境によって大きく形づくられます。本研究室では、主に文化心理学および比較文化心理学の観点から、異なる社会における心理の多様性と共通性を明らかにすることを目指しています。
文化を単なる「国の違い」として捉えるのではなく、人々が他者とどのように関係を築くのか、社会や文化的環境にどのように適応するのか、自分たちが生きる社会をどのように認識するのか、そして現代社会が直面するさまざまな課題にどのように反応するのか、その心理的プロセスに関心をもっています。
現在、以下のような相互に関連するテーマを中心に研究を進めています。また、研究室の既存のプロジェクトに限定されず、文化・社会と心理の関係について、学生自身が新たな問いを発展させていくことも重視しています。
詳しい内容については以下の説明をご参考ください。なお、大学院の研究に興味を持っている方は関連するリソースページをご確認ください。

1. 文化・自己・対人関係
本研究室の主要な研究テーマの一つは、文化が人々の自己のあり方や他者との関係性をどのように形づくるかを明らかにすることです。現在は特に、東アジアにおける相互協調性(interdependence)に着目し、日本と韓国の共通点と相違点について研究を進めています。
単純な個人主義―集団主義の枠組みを超えて、相互協調性の多様なあり方、関係的自己、対人関係における動機づけ、そして調和の維持や達成をめぐる文化的なアプローチなどを検討しています。また、こうした文化的傾向を形成する社会的・生態学的要因と、それらが対人行動や心理的適応にどのように関係するかについても関心をもっています。
キーワード: 相互協調性、関係的自己、対人動機、調和、達成、日韓比較、集団主義の多様性
2. 文化・社会とウェルビーイング
人々のウェルビーイングは、個人の特性だけでなく、その人が暮らす文化や社会の特徴とも密接に関わっています。本研究室では、幸福感、人生の意味などのウェルビーイングに関する心理的経験が文化によってどのように異なるのか、特に東アジア社会に着目して研究しています。
また、社会的不平等、社会構造、社会の変化などを人々がどのように認識し、それらの認識が心理的経験やウェルビーイングとどのように関連するかについても検討しています。さらに、宗教性、無常観やエフェメラリティ(ephemerality)など、人々が自己や人生、そして自らを取り巻く世界を理解するための文化的な意味体系についても研究対象としています。
キーワード: 主観的ウェルビーイング、人生の意味、社会的不平等、社会認知、宗教性、無常観、エフェメラリティ、東アジアのウェルビーイング
3. 文化適応と集団間関係
本研究室では、文化適応(acculturation)をマイノリティ集団とマジョリティ集団の双方の視点から研究しています。文化適応は、移民や文化的マイノリティがマジョリティ社会に一方的に適応するプロセスではなく、双方の期待、態度、行動が相互に関わるダイナミックなプロセスです。
多文化的な社会環境を人々がどのように認識しているのか、マジョリティ側が期待する文化適応のあり方とマイノリティ側の文化適応方略がどのように対応するのか、そしてどのような心理的・社会的条件が円滑な文化適応や良好な集団間関係につながるのかを検討しています。
キーワード: 文化適応、多文化主義、マジョリティ・マイノリティ関係、文化的適応、文化適応期待、コーピング、集団間関係
4. 環境心理学とグローバルな課題
気候変動をはじめとする環境問題に対して、人々が心理的にどのように反応するのかを、文化心理学・比較文化心理学の観点から研究しています。気候変動のリスクをどのように認識するのか、気候変動に関連してどのような感情を経験するのか、そしてそれらが環境配慮行動にどのようにつながるのかに関心をもっています。
特に、気候不安(climate anxiety)とウェルビーイング、気候正義(climate justice)、将来の社会に対する認識、環境配慮意識・行動の文化差などを研究しています。より広くは、文化的・社会的背景の多様性を踏まえながら、心理学が現代のグローバルな課題の理解にどのように貢献できるのかを考えています。
キーワード: 気候変動、気候不安、気候正義、環境配慮行動、社会の未来、環境とウェルビーイング
学生による多様な研究テーマ
本研究室で取り組む研究は、上記のテーマに限定されるものではありません。 文化・社会と人間の心理との関係について理論的に意味のある問いを立て、学生自身の関心から研究を発展させることを歓迎しています。また、国内外の研究者との共同研究を積極的に行っており、研究室の主要テーマを超えたさまざまな社会・文化心理学的課題にも取り組んでいます。
